近年、預貯金口座を口座凍結されて悩まれている方が増えているようです。
口座凍結をされると、「給与や年金を受け取れない」「現金を引き出せない」「カードの引き落としができない」「住宅ローンや公共料金の引き落としができない」など生活への大きな支障が生じることになるので、口座凍結の解決策を検討しなければなりません。
このコラムでは、口座凍結と解除の対応を積極的に扱う元検事の西山晴基弁護士が、口座凍結されるケース、それが無料で自分でも対応できるケースなのか、弁護士に相談した方がいいケースなのかについて解説します。
まず、そもそも口座凍結とは何か確認しておきましょう。
口座凍結とは、預金口座の取引の一切が停止されることをいいます。
預金口座が口座凍結されると、現金の引き出しはもちろんのこと、預金口座への入金も含め、あらゆる取引ができなくなってしまいます。
そのため、「給与や年金を受け取れない」「カードの引き落としができない」「住宅ローンや公共料金の引き落としができない」といった生活への大きな支障が生じる事態に陥ります。
口座凍結を解除する方法は、口座凍結されるケースによって異なります。
そのため、まず自分がどのような理由で口座凍結されているのか、現状を把握する必要性があります。
口座凍結されるケースは大きく以下の4つです。
実は無料で自分でも対応できるケース!?
これはさすがに弁護士に相談した方がよいケース!?
口座名義人が亡くなって口座凍結されたケースでは、仮払い制度を活用すれば、口座凍結されたままでも一部の預金を引き出すことができます。
仮払い制度で引き出せる金額は
のどちからか少ない方です。
仮払い制度は、各金融機関所定の申請書と必要な書類を提出することによって利用できます。
ただし、全てのケースで仮払い制度を利用できるわけではないですし、金融機関によって必要書類が異なることもありますので、仮払い制度を利用したい場合には、まず金融機関に相談してみましょう。
なお、口座凍結自体は、遺産分割等を済ませなければ、解除してもらえません。そのため、まず、遺産分割等について、弁護士などに相談した方がよいケースが多いでしょう。
この場合、凍結解除をしてもらうためには、「法定後見制度」を利用するしか、方法はありません。
法定後見制度の利用自体は、所定の書類を準備することで自分でも対応できなくはありません。
ただし、法定後見制度には、弁護士等への報酬がかかる、投機的な資産運用や相続税対策のための処分はできない、などといったデメリットがあるので、口座凍結されないための事前対策を検討する必要性があります。
この場合、不正利用の疑いを抱いている警察や銀行からの疑いが晴れなければ、口座凍結を解除してもらえません。
疑われているご自身からの説明を、警察や銀行に信用してもらうのはとても難しいことです。ご自身の話をまともに聞いてくれないケースも多いでしょう。
しかも、口座凍結を放置しておくと、その口座内の預金が消滅したり、凍結口座名義人リスト等にご自身の情報が載ることにより、他の預金口座が数日間にバタバタと立て続けに凍結されていってしまうリスクがあります。
そのため、不正利用の疑いで口座凍結された場合には、できるだけ早く、取扱経験のある弁護士に相談し、弁護士から警察や銀行に交渉してもらう必要性、緊急性が高いでしょう。
なお、詐欺の被害に遭った方は、警察だけではなく、弁護士に被害相談することもあります。その場合、弁護士が、振込先の口座を凍結する手続をすることがあります。
弁護士により口座凍結の手続がなされると、かなり速いペース(最短で1週間以内)で口座凍結されてしまうことが多いです。そのため、銀行から「弁護士の要請により口座凍結しました。」旨連絡を受けたり、弁護士から「被害者があなたの口座に詐欺のお金を振り込んだため、そのお金の支払いを求めます。」旨連絡を受けたりした場合には、ご自身も早急に弁護士に相談し、相手との交渉をしてもらう必要性、緊急性が高いといえます。