「K-POPグループ」脱退裁判 訴訟を終えたアイドルたちに、今思うことを率直に聞いた

公開日:2023.08.04
左から カリナ 河西邦剛弁護士 浅井耀介弁護士 (判決時 記者会見)

グループの途中脱退、ダイエットの失敗などを理由に所属事務所から約1500万円の損害賠償を請求された裁判で、東京地方裁判所はメンバーに労働基準法の類推適用を認め事務所側の請求を全て棄却した。今回、メンバーたちに、今回の裁判を通じて感じた生の声を聴いてみた。

引用元:https://times.abema.tv/articles/-/10075117
河西邦剛 弁護士

弁護士:一番初めに訴状を受け取った時、どうでしたか?

カリナ:家にいたらピンポーンと郵便局の人が来て、サインして受け取ったら裁判所からの封筒でした。分厚い書類が入っていました。

ミレ:母親から「こんなの届いたよ」とLINEが来ました。

ルナ:家族が受け取って、知りました。

カリナ:裁判所からの封筒を家で1人で見るには怖すぎて、バイト先まで分厚い封筒を抱えて行って、仕事が終わった後に見ました。

弁護士:訴状や資料を読むことに、どれ位時間がかかりましたか?

カリナ:1時間位はかかりました。ただ、結構書いてある内容が事実と違うところがあって、ツッコミながら読んでいました。

ミレ:私も結構事実が違うなとツッコミながら読んでました。

ルナ:私もツッコミながら読んではいましたけど、事務所を辞めると言ったのは私たちからなんで「やはり大丈夫なんだろうか…」と不安はありました。

左から カリナ ミレ ルナ
浅井耀介 弁護士

弁護士:書類を受け取った後は、メンバー間で話し合いをしましたか?

カリナ:裁判所からの書面には「この日までに、こういう書類を出してください」というのがあったんですが、私たちはどうすればいいか全然わからなくて…。

ルナ:まずネットで探して、実際に相談に行けるメンバーで何件かの弁護士に相談したんですが、「ウチはこういう芸能事件は扱っていない」と言われてしまい…。そんな中、芸能系が強いみたいなのを見つけて、レイ法律事務所に相談してみることにしました。

ルナ

弁護士:いくつかの法律事務所を回ってもなかなか決めかねていたということですか?

カリナ:この弁護士にお任せしたいという確信がなかなか持てなくて…。

ルナ:どこの事務所に行っても、弁護士からは「芸能系はあまり経験ないけど…」という返答で、メンバーで相談してもなかなか決めかねる状態でした。

弁護士:レイ法律事務所は初回相談が2万円ですが「高いな」とは思いませんでしたか?

ミレ:他から比べれば高いなとは思いましたが、芸能関係としてお金払う価値があるなと思って相談しました。

ルナ:私は、高いというよりか、「信用できるか」どうかで判断していました。

カリナ

カリナ:本当のところ高いなとは思いました。でも、実際に相談してみて良かったなと思ったので、最終的に依頼することにしました。相談前にもネットで(事務所や弁護士の)経歴や実績も調べました。

弁護士:実際にレイ法律事務所に相談した後、メンバー間でどんな話をしたんですか?

ルナ:いくつか相談してみて芸能系に強いということは重視していて、「一番勝てそう」な印象を持ったので、レイ法律事務所に正式に依頼しようとなりました。

カリナ:初回相談の時に説明してくれた弁護士から凄く自信みたいなものを感じたので、メンバー全員ともレイ法律事務所に依頼したいとなりました。

弁護士:訴訟提起から判決までは、1年11ヶ月位かかりました。訴訟が始まってからは、大体1月ごとに裁判が進んで行く中で、何か大変だったことはありますか?

ミレ:裁判のための資料作成していく中で、活動中のことを振り返るのが精神的にはしんどかったです。改めてLINEを見ていて、代表から言われた内容を目にしたりとか…。

ミレ

弁護士:判決の中でも、代表とのLINE記録が大きな証拠になりましたが、他のメンバーもLINE記録の確認は大変でしたか?

ルナ:やっぱり私も過去のLINEとか見ていて、「あ~こんなことされてたんだな~」っていう気持ちにはなりました。

カリナ:私も資料作成は大変でした。私も「こんなこと言われてたんだな~」と思いましたし。代表から言われたことも、その当時は当たり前だと思ってましたが、今になって思うと…ということはありました。

弁護士:弁護士との打合せも裁判のペースに合わせて1月ごとに行っていましたが、打合せはどうでしたか?

ルナ:弁護士との打合せについては、結構スケジュールを合わせてくださったので、そこまで大変ではなかったです。打合せの際にもわかりにくい部分については、何度も説明してくださり、『労働契約』とか『準委任契約』というのも少しずつ理解できていきました。

ルナ

弁護士:裁判を進めていく中で、何か気持ちの変化はありましたか?

ルナ:私は正直、最後まで不安はありました。ただ、裁判の進行に合わせて弁護士から説明を受けていく中で、「少しずつ勝てるんじゃないか」という気持ちは高まっていました。

ミレ:裁判の進行状況についてわかりやすく説明を受けていましたし、裁判があとどれくらいかかるとか、今後についても逐一説明はしてもらっていたので、安心感はありました。

カリナ:裁判の途中で、『請求されている1500万円の半分くらい(辞めるまで事務所が費やしたと主張していた部分の金額)について、少なくとも裁判所は認めない方向』という説明を弁護士から受けたので少し安心して、だんだん「完全に勝てるんじゃないか」という気持ちにもなっていきました。

カリナ

弁護士:訴訟の終盤になって、裁判所での尋問が行われた後には裁判官から和解提案もありました。みなさんは和解交渉も拒否しましたが、それはどういう気持ちだったのですか?

ルナ:和解の席に着くことで、相手方から条件が出されることも嫌でした。間違っていたのがどちらなのか、判決ではっきりさせて欲しかった。だから和解は嫌でした。

ミレ:確かに私たちから事務所を辞めたいと言ったのは事実です。でも、弁護士から説明を受けている中で、「私たちは間違いじゃなかった」と思うようになりましたし、和解するなら最後までやりたいと思い、和解交渉の席に就くのも辞めました。

カリナ:判決直前のタイミングで、裁判官から和解提案があったことには正直不安はありました。ただ、ここまで裁判をやってきて「勝てそう」という気持ちもあったので、このタイミングでの和解は絶対に嫌でした。

弁護士:裁判の結果、相手方の請求は全て棄却され、いわば完全勝訴判決でした。
初めて判決内容を聞いた時はどうでしたか?

為我井健 弁護士

ミレ:「ほっとした」「解放された」というのが正直なところでした。

ルナ:アイドル活動について「私たちに責任がない」ことについて、裁判所がそれを証明してくれてとても嬉しかったです。

カリナ:「やっと解放された」という気持ちでした。同時に、私自身も判決を読み進める中で、判決内容を相手方にも「是非読んでもらいたい」と思いました。

弁護士:今回相手方の請求は全て棄却され、逆に訴訟費用については相手方から支払いを受けましたが、これについてはどう思いますか?

ルナ:活動中にまともな給料も払われることなかったので、最後の最後で少しですが相手方からもらえてよかったです。

弁護士:裁判を進めていく中で相手方事務所への恐怖感だったり、何か印象が変わったことはありますか?

カリナ:自分たちから事務所を辞めたいと言っている以上、やっぱり自分たちを責める気持ちもありました。ですが、テレビなどの取材等を受ける中で、「よくそんなところで続けられてたね」「よく頑張ってたね」「辞めて正解だよ」と周りから声をかけてもらい、自分たちは間違ってなかったと思うようになりました。いつの間にか恐怖心は消えていて、むしろ自信に変わっていました。

カリナ

弁護士:訴訟提起の時に、テレビやメディアからの取材を受けてみようと思った理由はなんですか?

ルナ:一番は「自分たちと同じように辛い思いをしている人のためになりたかった」。そういう人たちが我慢して続ける必要はない、辞めてもいいんだよ、というのを伝えたかった。

ミレ:私も同じで、今アイドル活動していて同じような辛い思いを持った人に伝えたかった。

カリナ:私はそれとともに、自分たちの状況について、自分たちの言葉で伝えたかったというのがありました。

弁護士:カリナさんは判決の際に記者会見にも出席していますが緊張しましたか?

左から カリナ 河西邦剛弁護士 浅井耀介弁護士

カリナ:正直緊張しました。ですが、自分の言葉で伝えることができたと思います。SNSなどで憶測もある中、私たち自身の言葉で話すことで、言葉の重みも変わってくると思います。そういう意味でやって良かったと本当に思っています。

ミレ:メディアで報道されたことで、現在の職場の人たちにも自分たちの境遇を伝えられて良かったとは思いました。

ミレ

弁護士:今悩んでいるアイドルやタレントの方に向けて、何かアドバイスはありますか?

カリナ:自分たちのしてきたアイドル活動が間違ってないと思うのであれば、「事務所を辞める」という選択肢も考えてもいいし、その結果、もし訴えられたとしても自信を持つべきだと思います。

ミレ:是非周りの人に相談してほしいと思います。

ルナ:事務所側の人にはなかなか言いにくいとは思いますが、活動中にやはり受け入れられない、納得できないことがあった時は、ちゃんと言葉にして伝えることが必要だと思います。

今回の判決を受けて

カリナ

夢のために頑張って耐えて活動を続けてきた約4年間。私たちが悩みに悩んで、私たちの気持ちを綴り、出した書面が全ての始まりでした。

裁判所から送られてきた分厚い封筒を目にし、頭が真っ白になり、とても怖くすぐ開けることが出来なかったのを今でも覚えています。1500万円というとても払えない額。恐怖を覚え、不安でいっぱいでした。裁判になるぐらいなら、辞める決断をしないで耐えて続ければよかったと思ったりもしました。

ですが、弁護士さん始め、取材してくださった方々とお話をした際、「今まで辛かったですね。」などの言葉に涙が止まらなくなり、やはり私たちがいた環境はおかしかったんだ、と改めて気付きました。

約2年間の裁判では、資料作成をしながら当時のことを思い出し、精神的に大変苦しかったです。ですが、今回の判決を受けて、とても嬉しい気持ちとやっと李さんから解放された気持ちでいっぱいです。辞める決断をしてよかったんだ、自分達の意思を大事に、信じて頑張ってきてよかったとやっと今ここで思うことが出来ました。

このメンバーが大好きなので、出来ればもっと活動をし、スカイガールズは続けていきたかったです。スカイガールズとして活動してきた約4年間を自ら手放す選択をするのは簡単ではなかったので、正直悔しいですが、これからの人生を新たに頑張っていきたいと思います。

最後に私たちと同じような状況で苦しみながら活動してる方々が沢山いると思います。自分の夢のために頑張ってるはずなのに、辛い現実から目を背けて自分の感情を殺していくうちになんのために活動してるのかわからなくなることがあると思います。でも、ほんの少しの勇気を出して行動するだけで変わります。自分の気持ちを大事に、そして自分を信じてほしいです。今苦しんでる方たちに少しでも勇気を与えられたらと思います。

カリナ

ミレ

訴状が届いてからは、あの時の話し合いはなんだったのだろう、これからの私達の人生はどうなってしまうのだろうと毎日が不安でいっぱいだったので、正直やっと終わりを迎え少しほっとした気持ちです。

活動していた時の事を振り返れば、とても苦しくて目標の為に努力をしても認められる事はなく、ただ心の中で私が頑張れば他のメンバーには迷惑はかからない。メンバーの為にも、応援してくださる方の為にも頑張らないといけない。と自分の気持ちを隠していました。

今回、資料作成で活動中どんな事があったか、メンバーが知らなかった事など詳しく資料にし周りに共有した事によって、自分達がデビューの為に普通だと思い取り組んでいた事や耐えてきた事が、普通ではなかった事に今更かもしれませんが気づく事ができ、周りに相談ができる環境がとても大切だと感じました。
また、証人尋問のやりとりや今回の判決を見ると事務所の環境が整っていない中で活動をしていたんだと実感しております。

今、私達みたいな状況で悩んでる方がいたら、自分の中で解決するのではなく、勇気を出して周りに相談をしてみて欲しいです。
この結果を見て、少しでも力になれたらと思います。

ミレ

ルナ

まず初めに、家族や友達、ファンの皆様、これまでたくさんの心強い応援をしてくださり、本当にありがとうございました。
それから期待に添えずとても悔しいですし、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

訴訟が届いた時は、活動中もたくさんの辛いこと嫌だったことを耐えてきたのに、また苦しめられるのかと怒りを感じました。自分の人生の中で裁判をするなんて考えてもいなかったので、とても不安だったことを覚えています。

2017年から大きな夢を持ってメンバーと一緒に切磋琢磨して活動して来ましたが、このような裁判という形で別れを迎えてしまったことをとても残念に思います。
もちろん楽しかった思い出やたくさんの良い経験をさせていただきましたが、活動するために必要な環境が整っていないことや嫌なことを嫌と打ち明けることのできない環境、代表の発言は絶対だったので自分の意見を言うことができない環境がとても辛かったです。
何度も辞めたいと思いましたが、私が抜けたら他のメンバーに迷惑がかかってしまう、それから、『自分たちの夢を叶えるために頑張らなくちゃ』とずっと諦めずに耐えてきました。

今回の裁判の判決で、私たちが活動してきた環境は普通ではなかったと実感しました。
そして、私たちの辛かったという気持ちを理解してもらえたような気がしてとても嬉しかったです。
今私たちと同じ異常な環境で苦しんでいる方がまだまだいると思います。この記事を見てそんな方達を1人でも救えていたら嬉しく思います。
それから一生懸命自分の夢のために頑張っている方達がこういった自分の夢を諦めなくてはならない環境がなくなることを願っています。

ルナ

約2年前、大量の資料と共に届いたのは多額の請求額が書かれた訴状でした。
信じられませんでした。
裁判中は活動期間の事を思い出すことが多く、4人で過ごした日々はかけがえのない時間だったと感じます。しかし、事務所の体制が整っていないことで、当時は未来がどんどん暗く不安になるばかりでした。
なので、今回事務所の環境や体制が整っていないことや、日常的に心を傷つけられる言葉を発されたことについては裁判所に認めてもらえて安心しました。

活動中からずっと、肉体的にも精神的にも時間も全てをかけて日々を過ごしてきたにも関わらず、理解のできない不合理な内容で提訴され、ショックを受けたと共に怒りを感じたあの日をこの先一生、忘れることはありません。
今日という日まで担当の弁護士さんと共にこの裁判と向き合い、全力を尽くして闘ってきました。弁護土の方々には、裁判について分かりやすく説明していただき、気持ちに寄り添って大きな力になってくださりました。
向き合った時間と削られた心が報われる結果になり、本当によかったと思います。
そして、辞めると判断した私たちは間違っていなかったと、今なら心からそう思うことができます。

最後に、この先同じようなことは二度と起きてほしくないし、もし同じような思いをしている人がいるならば、勇気を出して本当の自分の気持ちを表して欲しいなと思います。

サヤ

芸能契約解除・移籍トラブル